子育てが終わったあとの生きがい|小さく始める選び方
新聞に挟まっていたカルチャー教室のちらしを、なんとなく最後まで眺めてみる。書道、フラダンス、英会話、パン作り。どれも良さそうなのに、どれも自分のこととして立ち上がってこない。ちらしを置いて、冷めたお茶を飲む。「生きがいを見つけましょう」という言葉に、少しだけ腹が立つ。——子育てが終わったあとの時間を前にして、そんな気持ちになっている方は、思っているよりずっと多いのです。
こんにちは、縁の整え方の専門家・出雲です。先に結論をお伝えしますね。
- 生きがいという言葉が重すぎて、動けなくなっている方がとても多いのです。まずこの言葉を降ろすところから始めます
- 他人の正解を借りて始めたことは、だいたい三か月で止まります。選び方には物差しが要ります
- 空いた時間に置くものは、大きな目標ではなく、小さく始められて、誰にも見せなくていいもののほうが続きます
この記事は、寂しさそのものの話ではありません。子どもが巣立ったあとの寂しさとその回復の順番は子どもの独立後が寂しいときの心の整え方でお話ししました。ここでお伝えするのは、その先——空いた時間に何を置くかという一点です。
「生きがい」という言葉が、いちばんの邪魔をしています
まず、この言葉をよく見てみましょう。
生きがい。この一語には、いつのまにか重たい条件がいくつも貼りついています。一生続けられるもの、人に語れるもの、誰かの役に立つもの、打ち込めるもの。この条件を全部満たすものを探そうとしたら、そう簡単に見つかるはずがありません。
しかも厄介なことに、この言葉は「見つけるもの」という形で語られます。どこかにすでにあって、探しに行けば会えるかのように。けれど実際は、始めたあとに、少しずつ育っていくものです。順番が逆なのですね。
長く子育てをしてきた方にとって、この言葉がさらに重くなる理由があります。子育ては、生きがいの条件をすべて満たしていました。長く続き、人に語れて、誰かの役に立ち、打ち込めた。それと同じ重さのものを次に探そうとするから、どれも小さく見えてしまうのです。
ですから、最初にやることは探すことではありません。言葉を降ろすことです。生きがいではなく、「今週やってみたいこと」くらいに置き換えてみてください。それだけで、目の前の選択肢が急に手に取れるようになります。
借りものの正解は、たいてい三か月で止まります
次に、よくある失敗の話をさせてください。
空いた時間を前にすると、多くの方が周囲を見渡します。あの人は資格の勉強を始めた、あの人はボランティアに行っている、あの人は孫の世話が生きがいらしい。そして、その中でいちばん立派に見えるものを選ぶ。
これがうまくいかないのは、選んだ理由が「自分がやりたいから」ではなく「そうするのが正しそうだから」だからです。始めた直後は達成感がありますが、三か月ほど経つと、通うこと自体が義務になります。そして辞めたときに、「私は何をやっても続かない」という新しい自己嫌悪が残る。これがいちばんもったいないのです。
もうひとつ、よくあるのが人に合わせて始めることです。友人に誘われて一緒に通い始める。悪くはないのですが、相手が辞めたときに自分も辞めることになります。人と場所は分けて考えたほうが、長持ちします。習い事の場での人付き合いに疲れてしまう方は習い事の人間関係が面倒なときの付き合い方も先に読んでおくと、身構えずに始められますよ。
空いた時間に置くものを選ぶ、3つの物差し
では、何を基準に選ぶのか。私がおすすめしているのは、次の三つです。
物差し1.誰にも見せなくていいか
人に報告する必要がなく、成果を見せる相手もいないもの。これがいちばん続きます。誰かに見せる前提のものは、始めた瞬間から評価が入り込み、疲れてしまうからです。上手にならなくていい、途中でやめてもいい。そういう性質のものを、まず一つ持ってください。
物差し2.子育て中に、時間がなくてできなかったことか
やりたいことが浮かばないという方に、私はよくこう伺います。「20年前、時間さえあればやりたいと思っていたことは何でしたか」。すると、驚くほど具体的な答えが返ってきます。一日中本を読む、平日の昼に映画を観る、電車でどこかへ行く、絵を描く。
当時あきらめたものには、あなた自身が選んだ痕跡が残っています。誰かのおすすめより、こちらのほうが確かです。
物差し3.今日か明日、5分だけ試せるか
準備に一か月かかることは、たいてい始まりません。道具を買いに行く前に、5分だけできる形を探してください。教室に申し込む前に、その分野の本を一冊借りてみる。それで気持ちが動かなければ、それはあなたのものではなかったというだけです。
三つの物差しに共通しているのは、小ささです。人生の後半に何かを始めるとき、大きく始めるほど失敗の傷も大きくなります。小さく始めて、続いたものだけ育てる。これが、いちばん確かなやり方です。
小さく始めるための、5つの手順
- 紙に、やってみたいことを10個書き出します。立派である必要はありません。「昼寝を毎日する」でも「知らない駅で降りてみる」でも構いません。10個埋まらなくても大丈夫です
- 書いたものに、三つの物差しを当てはめて印をつけます。誰にも見せなくていい、20年前にやりたかった、5分で試せる。印が二つ以上ついたものが候補です
- 候補の中から一つだけ選んで、今週のうちに5分やります。うまくいくかどうかは考えません。触ってみるだけです
- 一週間続けてみて、「またやりたい」と思ったものだけ、二週目に進めます。思わなかったものは、迷わず捨ててください。捨てるのは失敗ではなく、選別が進んだということです
- 三か月続いたものが出てきたら、そこで初めて道具を買う、教室に申し込むなど、少しお金や時間をかけます
この順番でやると、失敗しても傷が浅くて済みます。そして、三つか四つ試すうちに、たいてい一つは残るものです。
「誰かの役に立つ」を、急いで求めないでください
もうひとつ、お伝えしておきたいことがあります。
長く誰かの世話をしてきた方は、役に立っていないと落ち着かない、という感覚を持っていることが多いのです。だから、空いた時間にすぐ「誰かのために」を入れたくなる。ボランティア、地域の役、孫の世話。
もちろん、それ自体は素晴らしいことです。ただ、順番だけ気をつけてください。自分のためだけの時間を持たないまま人のために動き始めると、また同じ形に戻ります。誰かの予定に自分の一日が決められ、断れなくなり、数年後にもう一度同じ場所に立つことになるのですね。
ですから最初の半年は、自分のためだけのものを一つ育ててから、その次に人と関わるものを足す。この順番を守った方ほど、無理なく続けていらっしゃいます。
なお、何も始める気になれない、日中も気持ちが晴れない、眠れない日が続いているという場合は、意欲の問題ではないかもしれません。心療内科や、体調の変化が気になる場合は婦人科など、医療機関への相談も考えてみてください。始める力は、休んだあとに戻ってきます。この時期に何も起きない感じが長引いている方は運気の停滞から抜け出す方法も参考になるはずです。
縁切り・開運の視点——役割が終わった場所は、空白ではなく余白です
縁を見る立場から、最後にお話しさせてください。
昔から、人生には役割が返却される時期がある、と言われてきました。子育ての終わりは、その中でも大きなものです。そして、役割が返されたあとにできる場所を、多くの方が「空白」と呼びます。埋めなければいけない穴のように扱ってしまうのですね。
けれど私は、あれは空白ではなく余白だと思っています。空白は欠けたところですが、余白は、これから何を書くかを選べる場所です。急いで埋める必要はありませんし、埋まらない年があっても構いません。
そして、この時期に始めたことは、たいてい人と結びついていきます。同じものに時間を使っている人とは、年齢が離れていても話が通じるからです。人生の節目のあとに縁が動きやすいことは人生の転機に現れるサインでもお話ししました。
生きがいという言葉は、あとから振り返って付ける名前です。今は、名前のない小さなことを一つ、始めてみるだけで十分ですよ。
まとめ
- 生きがいという言葉が重すぎて動けなくなっています。「今週やってみたいこと」に置き換えてください
- 選ぶ物差しは三つ。誰にも見せなくていい、20年前にやりたかった、5分で試せる
- 小さく始めて、続いたものだけ育てる。自分のためのものを先に、人のためのものはその次に
役割が変わるこの時期は、生活の流れそのものが動きやすい時期です。今の停滞の度合いを確かめておくと、始める順番が決めやすくなります。
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