謝られたときの返し方|許せない時も
「この前はごめんね」。通知が光って、開いて、既読だけがついた。「いいよ」と打てば、それで終わる。終わることはわかっている。それなのに指が動かない。まだ、あの日のことを思い出すと胸のあたりが重くなるからです——。謝られたときの返し方を探してこられたあなたは、その画面を開いたまま、何十分か過ごしているのではないでしょうか。
こんにちは、縁の整え方をお伝えしている出雲です。この記事は、大人らしく水に流す方法をお伝えするものではありません。許すかどうかは、あなたが決めることです。ここで扱うのは、許していない状態のままでも返事ができる形のほうです。
- 返事が詰まるのは、三つの別々のことを一言にまとめようとしているからです
- 三つに分けると、許さないまま、それでも誠実に返せます
- 場面別の返し方を並べます。何度も同じことで謝ってくる相手への返しも入れます
- そして、返さなくていい謝罪もあります。最後に線を引きます
「いいよ」が言えないのは、心が狭いからではありません
謝られたら許すもの、という空気があります。だから「いいよ」が出てこないと、自分が意地悪になったように感じてしまう。ご相談でも、多くの方がまずここを気にされます。
ただ、謝罪と許しは、もともと別々の出来事です。謝罪は、相手が自分の行いについて表明したこと。許しは、あなたの中で痛みの扱いが変わること。前者が起きたからといって、後者が自動的に起きるわけではありません。
そして、痛みの回復には時間がかかります。傷が治る速さを本人が決められないのと同じで、許しの速さも意志では決まりません。「まだ無理だ」と感じているなら、それは今のあなたの正直な状態であって、欠点ではありませんよ。
ですから、返事の言葉を探すときは、許した風の言葉を探さないでください。探すのは、いまの状態のまま言える言葉です。
返事は、三つの層でできています
返事が詰まるのは、性格のせいではなく構造のせいです。ひとつの返事の中に、性質の違う三つが同居しています。
第一層、受け取ったという合図。相手の言葉が届いたことを知らせる部分です。
第二層、許すかどうか。相手の行いをどう扱うかという、あなたの内側の話です。
第三層、これからどうするか。関係を続けるのか、距離を置くのか、条件をつけるのか。今後の取り決めに当たります。
「いいよ」という三文字は、この三つを全部いっぺんに引き受けてしまう言葉です。受け取った、許した、これまでどおりでいく。だから、二層目が済んでいない人には言えないのですね。
やることは、三つを切り離すことです。第一層だけを返す。第二層は保留すると伝える。第三層は、決まったときに別で伝える。この形にすると、嘘をつかずに返事ができます。
層ごとの言葉を持っておく
第一層だけを返すとき
「連絡ありがとう。読みました」
「言ってくれてありがとう。受け取りました」
「わかりました。伝えてくれてよかったです」
これらは、許しの表明を含みません。それでも、相手にとっては十分に返事です。無言のままにされるより、はるかに落ち着きます。
第二層を、保留すると伝えるとき
「正直まだ整理がついていないので、いまはうまく返せません。でも、謝ってくれたことは受け止めました」
「気持ちは受け取りました。ただ、しばらく時間がかかると思う」
保留を言葉にすると、相手は待つ姿勢に入れます。ここを黙っていると、相手は「怒っているのか」「終わったのか」を推測し続け、追加の連絡が増えがちです。
第三層だけを決めて伝えるとき
「これからは、予定は前日までに決めてもらえると助かります」
「同じことが起きたときに、どうするかだけ先に決めておきたいです」
許すかどうかを棚に上げたまま、今後の取り決めだけを進める形です。仕事の場面では、この層だけで話が終わることも多いですよ。
すんなり受け取れるとき
「気にしないで。言ってくれてありがとう」
「もう大丈夫。こちらこそ、あのときは余裕がなくてごめんね」
軽い行き違いなら、ここで終わらせてしまうのがいちばんです。全部の出来事を三層に分ける必要はありません。
場面別の返し方
友人からのLINEに。「連絡ありがとう。正直まだ少し引きずってるんだけど、そのうち普通に話せると思う」。完治していないことを、そのまま短く書きます。相手が食い下がってきても、同じ文を繰り返して大丈夫です。
職場でミスを謝られたとき。「わかりました。次から送付前に一度確認をお願いします」。感情の話に広げず、第三層だけで完結させます。「大丈夫ですよ」と言いすぎると、あとで困りごとが起きたときに言い出しづらくなります。
家族に、昔のことを謝られたとき。「言ってくれてありがとう。ただ、すぐには気持ちが追いつかないと思う」。ここは、いちばん時間がかかる場面です。急いで受け取ろうとしなくていいのですよ。
繰り返し同じことで謝ってくる相手に。「謝罪はもういいので、次から時間を守ってもらえますか」。三度目からは、謝罪を受け取る作業自体が負担になります。第一層を省いて、第三層だけを渡すほうが双方のためになります。
謝罪が重すぎて、こちらが慰める形になっているとき。「そこまで気にしなくて大丈夫です」と一度だけ返して、それ以上は続けないでください。長い謝罪に長く応じると、慰める役が固定されます。
心当たりがないのに謝られたとき。「何のことかわからないので、教えてもらえますか」。わからないまま「いいよ」と返すと、身に覚えのない前提が二人のあいだに残ります。
第三者経由で謝罪が届いたとき。「伝えてくれてありがとう。返事は自分でします」。仲介した人を通して返すと、その人が板ばさみになります。
こちらが謝りたくなってしまうとき。「私のほうこそ」を反射で言わないでください。自分にも非があるなら、日を改めて別に伝えるほうが、両方の謝罪がきちんと届きます。謝りすぎる癖に心当たりがある方は、謝り方のLINE例文と場面別の伝え方の前半にある仕分けをどうぞ。
許すことを、期限にも義務にもしない
ここは、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
許さなければ前に進めない、という言い方をよく見かけます。ただ、私はそう思っていません。許さないまま静かに離れて、それで穏やかに暮らしている方をたくさん見てきました。
許しは、目標として置くと苦しくなります。「まだ許せない自分」を毎日採点することになるからです。最初の出来事とは別の、新しい消耗ですね。
代わりに置いていただきたいのは、扱いを決めることです。この件は、もう考えない時間を増やす。この人とは、会う回数をこのくらいにする。決めるのは気持ちではなく、行動のほうです。行動が決まると、気持ちはあとから静かについてきます。そして何年か経って、どうでもよくなっていることに気づく日が来ます。それが、許しと呼ばれているものの実態なのかもしれません。
とくに親から謝られたとき、あるいは謝られないまま時間だけが過ぎているときは、この苦しさが強く出ます。親を許せない気持ちを手放す方法に、許さないままでいい、という前提での進め方をまとめました。
自分と相手のあいだにどこまでの線を引くかを先に決めておくと、返事も楽になります。線の決め方は境界線の引き方の3つの手順をご覧ください。
返さなくていい謝罪もあります
謝罪が、関係をいったん白紙に戻すための道具として使われている場合があります。強い言葉をぶつけては謝り、また同じことをする。この繰り返しの中では、あなたの返事は次の一巡の許可証として使われてしまいます。
そういう相手には、返事を急がなくてかまいません。返さない、というのも一つの返事です。そして、繰り返しの記録を短くでいいので残しておいてください。日付と、何があったかだけで十分です。
謝罪のあとに強い言葉が繰り返される、謝られたのに恐怖が消えない、体が先にこわばる。こうした状態があるなら、それは謝罪と許しのやり取りではありません。職場であれば社内の相談窓口や各都道府県労働局の総合労働相談コーナー、身の危険を感じる場面があるなら警察相談専用電話の#9110があります。強い言葉に日々さらされている場合の身の置き方は言い方がきつい人を受け流す返し方の型にまとめました。
そして、眠れない日が続く、食欲がない、その人のことを考えると涙が出る。こうした状態が二週間ほど続いているなら、心療内科やカウンセリングなど専門家に相談することを考えてくださいね。我慢が限界に近づくとどんな形で表れるかは我慢しすぎる人の限界サインに書いています。
縁を整える視点|受け取ることと、水に流すことは違います
日本には水に流すという言い方がありますが、あれは流したい側の願いであって、受けた側の義務ではありませんね。流せるものは流れますし、流れないものは残ります。残ったものを無理に押し流そうとすると、そのぶん川が荒れます。
私がおすすめしているのは、受け取ることと流すことを分けて考えることです。受け取るのは、今日できます。流すのは、時間が決めます。分けておけば、返事が出せないまま関係が凍りつくことはありません。
そして、返事をした自分を責めないでください。「いいよ」と言ってしまったあとで悔やむ方はとても多いのですが、あの場でそう言ったのは、その場を守るための判断です。あとから条件をつけ直すことは、いつでもできますよ。
まとめ|三つに分ければ、許さないまま返せます
- 返事は三層。受け取った合図、許すかどうか、これからどうするか。分けると詰まりません
- 「まだ整理がついていない」と保留を言葉にしてよい。許しは期限を切るものではありません
- 繰り返される謝罪には返事を急がない。記録を残し、必要なら窓口に相談を
その相手との縁を、これからどう扱うのがいいのか。迷ったままなら、いまの状態を一度確かめてみませんか。
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