子どもの独立の準備|親の心構えを整える順番
進学の案内が届いた夜、一人で台所に立ちながら、まだ一年以上あるのに指を折って数えている自分に気づく。あと何回、この子の分の弁当を作るんだろう。あと何回、この時間に玄関の音を聞くんだろう。うれしいはずなのに、胸のあたりがざわざわして落ち着かない——子どもの独立の準備を調べてこられたあなたは、まだ来ていない日のことを、もう半分くらい生きてしまっているのではないでしょうか。
こんにちは、縁の整え方をお伝えしている出雲です。今日は、独立の準備という言葉について、少し立ち止まるところから始めさせてください。先に結論をお伝えしますね。
- 独立の準備というと荷物や手続きの話になりがちですが、いちばん間に合わなくなるのは親自身の心の準備です
- 心の準備は当日には作れません。一年単位で、少しずつ生活の重心をずらしていく必要があります
- この記事は親の側の心構えの話です。子どもに何を渡しておくかという実務は、子どもが巣立つ前にすることにまとめました
この二本は役割が違います。あちらは巣立つ日までに手を動かす話、こちらはあなた自身の中で起きることの話ですね。両方を並行して進めるとちょうどいいのです。
「独立の準備」を、子どもの荷物の話にしないでください
独立が近づくと、多くの家では話題が実務に寄ります。部屋の広さ、家電をどうするか、生活費はいくらか。手を動かしていると安心できるからです。
けれど、実務は締め切りがあるので何とか間に合います。間に合わないのは、いつも親の心のほうです。
引っ越しの日、荷物を運び終えて、空っぽになった車で帰る道。あの帰り道が、多くの方にとって最初の山になります。そこまでの数か月、段ボールとリストのことを考えて過ごしてきたぶん、用事が終わった瞬間に、何も持っていない手だけが残るのですね。
だから、この時期にやっておくといいのは、荷造りと並行して、自分の生活の下ごしらえを始めることです。子どものために何をするかではなく、子どものためではない時間を、少しずつ作っておくということ。
これは「今から寂しさに備えて予行演習をしましょう」という話ではありません。備えても寂しさは来ます。そうではなく、寂しさが来たときに立っていられる床を、先に一枚敷いておく感覚です。
心の準備は、当日には間に合いません
親の心には、だいたい決まった順番で波が来ます。あらかじめ知っておくと、渦中で自分を責めずに済みます。
一年ほど前。まだ実感はないのに、ふとした瞬間に胸がざわつきます。卒業アルバムの写真、進路の書類、季節の行事。「これが最後」という言葉が頭をよぎるたび、少し息が浅くなる。この時期は、悲しみというより落ち着かなさとして出ます。
半年前から数か月前。急に、子どもの生活の粗が気になりはじめます。洗濯もできないのに、朝も起きられないのに、と口に出してしまう。これは心配の形をした不安です。手放す準備ができていない心が、まだ必要とされていたいと訴えている状態ですね。ここで小言が増えて、直前の時期に親子の空気が悪くなる家は少なくありません。
直前の一か月。逆に、あっさりしてきます。忙しさに助けられて、感情が動かなくなる。このときに「思ったより平気だった」と感じても、油断しないでください。多くの場合、感情は遅れて来ます。
そして、当日から数週間。ここが本番です。ただ、この時期の反応は人によって大きく違います。すぐに泣ける方もいれば、半年経ってから急に来る方もいます。早い遅いに、良し悪しはありません。
独立したあとの寂しさの手当てそのものは、子どもの独立後が寂しいときの整え方で詳しくお話ししています。この記事では、その前にできることに絞りますね。
一年前から始める、三つの棚卸し
準備というのは、増やすことではなく、置き場所を決めておくことです。三つだけ、棚卸しをしておきましょう。
時間の棚卸し
一日のうち、子どものために使っている時間を数えてみてください。起こす、作る、洗う、送る、待つ。合計すると、驚くほどの量になるはずです。その時間が、ある日まとめて空きます。
やっておくといいのは、その時間の全部を今から埋めることではありません。空く時間帯のうち、ひとつだけ先に予定を入れておくこと。たとえば夕方の一時間に、週一回の習い事や散歩を入れておく。空白を一気に受け取るより、既に何かがある場所として迎えるほうが、体が驚かずに済みます。
お金の棚卸し
これは家計の話であると同時に、心の話でもあります。子どもにいくらまで出すのか、いつまで出すのか。ここを決めていない家は、独立後に「頼られること」で関係を保とうとしてしまいがちです。
金額そのものより、期限を決めておくほうが大事です。学生の間は住居費だけ、卒業したら仕送りは終わり、といった線を、あなたの中で先に持っておく。決めておくと、あとで断るときに罪悪感が薄くなります。
話題の棚卸し
夫婦二人になる家では、これが効きます。この十数年、会話の八割が子どもの話だったという家は珍しくありません。子どもがいなくなると、話す材料が同時に消えます。
今のうちに、子ども抜きの話題をひとつ作っておいてください。旅行の計画でも、家の修繕でも、テレビ番組でも構いません。中身は何でもよくて、子ども以外の共通の話題があるという事実が大事なのです。すでに会話が薄くなっている場合は、夫婦の会話がないときの四段階と戻し方を先に読んでおくといいですよ。
一人で暮らす家になる方へ
ひとり親で育ててこられた方、あるいは配偶者と離れている方の場合、独立は「二人になる」ではなく「一人になる」を意味します。この場合、準備の重みは変わります。
家の中に、自分以外の生活音がなくなるのですね。テレビの音、階段の足音、水を使う音。これらは意識されないまま、生活の輪郭を作っていたものです。
先にやっておくといいのは、家の外に居場所を三つ作っておくことです。図書館、行きつけの店、地域の集まり。どれも人と深く関わらなくていい場所で構いません。行き先があるだけで、静けさに追い詰められにくくなります。
それから、家の中の音を先に決めておくこと。朝はラジオをつける、といった小さな習慣をひとつ、独立の前から始めておくと、その音があとで支えになります。
「まだ早い」と思ううちに、始めておきたい五つ
- 空く時間帯をひとつ選んで、そこに今から予定を入れておきます。中身より、時間帯を先に押さえるのが要点です
- 子どもの生活について口を出す回数を、一日一つまでと決めます。直前期に小言が増えるのは自然な反応ですが、増えるほど別れ際の空気が固くなります
- お金を出す期限を、自分の中で決めます。伝えるのはあとでいいので、まず自分が決めておくこと
- 子ども以外の話題を、家の中にひとつ置きます。夫婦でも、一人でも、誰かに話せる自分の話題を持っておくということです
- 「独立したら何をしたいか」を三つ書き出します。大きな夢でなくて構いません。平日の昼に映画を観る、くらいがちょうどいいのです
五つのうち、今日できそうなのはどれでしょうか。一年前に一つでも動かしておけると、当日の足元がずいぶん違います。
なお、眠れない、食欲がない、気分の落ち込みが二週間以上続いているという場合は、心構えの問題として抱えないでください。この年代は体の変化も重なりやすい時期です。心療内科や婦人科など、医療機関への相談も検討してみてくださいね。
縁を整える視点|親の役目は、終わるのではなく形を変えます
縁を見つめてきた立場から、お伝えしておきたいことがあります。
昔から、人生には役目が入れ替わる節目があり、その前後で流れが大きく動くと言われてきました。子どもの独立は、その中でも大きな節目のひとつです。
このとき起きているのは、縁が切れることではありません。毎日世話をする関係から、離れて互いを気にかける関係へ、形が変わるだけです。形が変わる時期に落ち着かなくなるのは、あなたが子離れできていないからではなく、変化の途中にいるからですね。
そして、こういう節目の前後では、人間関係全体が動きやすくなります。長く続いていた付き合いが自然に薄くなったり、逆に思いがけない縁が戻ってきたり。人生の後半の付き合いをどう選び直すかは、人生の後半の人間関係を見直す三つの観点でお話ししました。
もし、独立の準備を始めてから何をしても物事が進まない感覚があるなら、それは気持ちの問題だけではないかもしれません。生活の重心が移る時期に起きやすい停滞については、運気の停滞から抜け出す方法で順を追ってまとめています。
まとめ|準備するのは、荷物ではなく置き場所です
- 実務は締め切りに間に合いますが、親の心の準備は当日には作れません。一年単位で少しずつ進めます
- 時間・お金・話題の三つを棚卸しし、空く時間帯にひとつだけ先に予定を入れておきましょう
- 手を動かす実務は子どもが巣立つ前にすること、独立したあとの寂しさは子どもの独立後が寂しいときにまとめてあります
役割が変わるこの時期は、家族との関係そのものが動きやすい時期でもあります。
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