子どもに怒りすぎる自己嫌悪|6秒より前の話
寝顔を見ながら、今日の自分の声を思い出しています。あんな言い方をするつもりはなかった。玄関に脱ぎ散らかされた靴くらいで、どうしてあそこまで大きな声が出たんだろう。明日はもう怒らないと決めて、そして明日の夕方にはまた同じことをしている——子どもに怒りすぎたあとの自己嫌悪は、毎晩律儀にやってきますね。
こんにちは、縁の整え方の専門家・出雲です。この記事は、あなたを反省させるためのものではありません。むしろ最初に、よく言われている対処法をひとつ否定するところから始めます。
- 怒りが出そうなときに六秒待つ、という方法があります。あれが効かないのは、あなたの意志が弱いからではありません
- 夕方に爆発する怒りは、その瞬間ではなく数時間前にはもう準備ができています。手を打つ場所は、六秒前ではなくもっと手前です
- そして、もし手が出ている、あるいは出そうになっているのなら、それは意志で抱えるものではありません。相談先を具体的にお伝えします
怒りすぎてしまう親は、たいてい、いちばん自分を責めています。責めても回数は減りませんから、仕組みのほうを変えていきましょう。
「六秒待つ」が効かないのは、あなたのせいではありません
怒りは六秒でピークを越えるから六秒待ちましょう、という説明はよく知られています。理屈としては間違っていません。けれど、家の中で使うと、ほとんどの人がうまくいきません。
ひとつめの理由は、六秒待つには待とうと思える余裕が要ること。気力が底をついているときは、待つという判断そのものができません。ふたつめは、家では怒りが単発で来ないこと。職場の理不尽なら一回耐えれば場面が終わりますが、家では六秒待った直後に同じことがもう一度起きます。六秒を十回積み上げるのは現実的ではありません。
みっつめが、いちばん大事なところです。夕方に噴き出す怒りは、その場で生まれたものではありません。朝からの疲れ、片づかない仕事、寝不足、体調の波、誰にも話せていない不満。そういうものが一日かけて溜まって、たまたまいちばん弱い相手のところであふれます。目の前の出来事は原因ではなく、栓を抜いただけなのです。
だから、六秒前ではなく六時間前に手を打ちます。手前のほうが、ずっと簡単です。
怒りが出やすい時間帯は、たいてい決まっています
まず、自分の怒りの地図を作ります。一週間、大きな声が出た時刻、その直前の三十分にしていたこと、そのときの自分の体の状態(空腹、寝不足、痛み、疲れ)。この三つだけメモしてみてください。
一週間分並べると、かなりの確率で偏りが出ます。多いのは、夕方の帰宅から夕食までの二時間。次に多いのが朝の登園・登校前です。どちらも、時間に追われながら複数の作業を同時に進めている時間帯ですね。つまり、あなたが怒りっぽい人なのではなく、その二時間の設計に無理があるということ。性格の話に見えていたものが時間割の話に変わると、手の打ちようが出てきます。空腹、寝不足、痛みがそろっている日に穏やかでいられる人は、そう多くありません。おやつを食べていない自分に気づくだけで、その日の声の大きさは変わります。
手前で打つ、五つの手当て
いちばん頻度の高い時間帯に、ひとつずつ手を打ちます。全部やろうとしないでください。ひとつで十分です。
その時間の作業をひとつ減らす
夕食を一品減らす、洗濯を朝に回す、買い物をまとめる。手を抜いた分だけ、声が小さくなります。怠けではなく、家の空気への投資です。自分の血糖と睡眠を先に確保する
子どもより先に、あなたが少し食べてしまって構いません。洗い物を残して先に寝る日を週に一日作る。順番を変えるだけですが、効き目は大きいのです。声が出る前に、部屋を変える
「ちょっと待ってて」と言って洗面所やベランダに離れるのは、逃げではなく手当てです。背中を向けて飲み込むより、離れて戻ってくるほうが、あとに残るものが少なくて済みます。叱る内容を、あらかじめ三つに絞る
危ないこと、人を傷つけること、嘘をつくこと。この三つだけと決めて、あとは目をつぶる。決めておかないと、その日の機嫌で基準が動きます。基準の動く家は、子どもにとっていちばん緊張する家です。一日の中に、怒らなくていい十分を置く
用事も指示もない十分を作ります。そこで何かを教えようとしないのがコツです。
これらを実行できるかは、あなたが休めているかにかかっています。自分の限界が見えなくなっている方は我慢しすぎる人の限界サインを、この年代の体の揺れが重なっている方は更年期のイライラで人間関係を壊さない過ごし方も見てみてください。
言ってしまったあと、二十分以内にすること
それでも、言ってしまう日はあります。大事なのは、そのあとの二十分です。やり直しには型があります。時間を空けすぎないこと、理由を足さないこと、返事を求めないこと。
「さっきの言い方、よくなかった。ごめんね」
これで十分です。ここに「でも、あなたが何度言っても聞かないから」を足した瞬間に、謝罪は説明に変わり、二度目の圧として届きます。返事がなくても構いません。謝ったという事実だけが、その子の中に残ります。言葉選びに迷うときは謝り方の例文集も借りてください。
そして、謝ったあとに長く沈み込まないでください。ここが今日いちばんお伝えしたいところです。親が自己嫌悪でうつむいていると、子どもは、自分のせいでお母さんが苦しんでいる、と受け取ります。家の空気の変化に敏感で、原因を自分に引き受ける癖があるからです。罪悪感は、その日のうちに使い切ってください。翌日、いつもより少しやわらかい「おはよう」をひとつ渡す。反省を長く抱えるより、次の一言を変えるほうがずっとよく届きます。
手が出ている、出そうなときは——ここは意志の話ではありません
叩いてしまった。物を投げた。腕を強くつかんで痣ができた。あるいは、手が出そうになるところまで来ていて、自分でも怖い。そういう段階にいるなら、これは気持ちの持ちようで抱えるものではありません。相談してください。
そう書くと、通報されるのではないかと身構える方がいます。だから先に言っておきます。相談は罰ではありません。窓口の多くは、親を裁くためではなく、その家が回るように手を貸すために置かれています。実際に届くのは、家事や育児の支援、預かりの手配、話を聞く場といった、具体的な手当てです。
児童相談所虐待対応ダイヤル 189(いち・はや・く)
全国どこからでも、二十四時間つながります。匿名でも相談できます。「まだそこまでではないかもしれないけれど」という段階でかけて構いません。むしろ、その段階でかけるほうがいいのです。お住まいの自治体の子育て支援窓口・こども家庭センター
家庭の状況に合わせた支援を組み立ててくれます。一時預かりやショートステイなど、少し離れる時間を作る仕組みを教えてもらえることもあります。親子のための相談LINE
国が用意している、子育ての悩みをLINEで相談できる窓口です。声を出して話す気力がない日でも使えます。医療機関やカウンセリング
気分の落ち込みが二週間以上続いている、眠れない、涙が止まらない、感情が自分でも制御しにくい。そう感じているなら、心療内科や精神科、自治体の保健センターに相談してください。
叩いてしまった自分は最低だ、で話を終わらせないでください。そこで終わると、明日も同じ夕方が来ます。終わらせずに、電話を一本かける。それは、あなたが親をやめる行為ではなく、続けるための行為です。
その怒りの出どころが、あなたの育った家にあることも
子どもに怒りすぎてしまう方の中には、自分自身が強く叱られて育った、という方がかなりいらっしゃいます。厄介なのは、いちばんされたくなかった言い方が、いちばん口をついて出ることです。これは人格の問題ではなく、習った言葉がそれしかなかったというだけのこと。言い方の練習は子どもを比べてしまう罪悪感のほどき方に、そのまま使える置き換えとして並べました。育ちのほうに思い当たる方は毒親育ちの生きづらさを克服する方法を、根のところに親への感情が残っているなら親を許せない気持ちを手放す方法を読んでみてください。
縁を整える視点|怒りは、あふれた水です
昔から、人の気力は器に溜まる水のようなものだ、と言われてきました。器が満ちていれば少し揺すられてもこぼれませんが、空に近いと、わずかな揺れでも底が鳴ります。夕方に声が大きくなるのは、あなたの器が浅いからではなく、その時間にはもう水が残っていないからです。
そして、こぼれた水はいちばん近い人にかかります。子どもに向かうのは、その子が悪いからではなく、近いから、そして安全だと思われているから。逆に言えば、その子はあなたの前で安心して隙を見せているということでもあります。ですから、この時期にいちばん効くのは反省ではなく補給です。眠る、食べる、少し離れる、誰かに話す。親が自分の器に水を入れることは、わがままではなく、家族への手当てですよ。
まとめ|変えるのは性格ではなく、時間帯と器の水位です
- 六秒待つ方法が効かないのは意志の問題ではありません。怒りは数時間前から準備されています
- 一週間、怒った時刻と直前の状況を記録して、いちばん多い時間帯の作業をひとつ減らしましょう
- 言ってしまったら二十分以内に一文で謝り、長く沈み込まない。手が出ている・出そうなときは189や自治体の窓口へ。相談は罰ではありません
家の中の消耗は、静かに積み上がっていきます。今のあなたの状態を、いちど確かめてみませんか。
家の空気を軽くする工夫は、LINEでもお届けしています。