盛り塩の置き方とやり方|場を整える作法
料理屋の入り口に、白い小皿に盛られた塩が置かれている。通りすがりに目を留めて、なんとなく背筋が伸びるような感じがした。うちの玄関にも置いてみようか——そう思って調べ始めたら、粗塩がいいと書いてあるページ、天然塩でなければいけないと書いてあるページ、円錐がよい、いや八角がよい、置く場所は玄関の外、いや内側。読むほどに手が止まってしまったのではないでしょうか。
こんにちは、縁の整え方をお伝えしている出雲です。あなたが迷うのは当然です。盛り塩の作法は、地域によっても、伝えてきた宗派や流派によっても違います。ひとつの正解にまとめられるものではないのです。
先に、この記事の立場をはっきりさせておきますね。
盛り塩は、場を整えるための作法です。誰かとの縁を断つための塩の使い方とは、目的も置き方も違います。重い関わりに区切りをつける塩の扱いと、暮らしている場を静かに保つ盛り塩とでは、向いている方向が別なのですね。この記事でお伝えするのは後者、住まいの空気を整えるほうの作法です。住まい全体のほうから手をつけたい方には、大掃除で運気を上げるやり方に場所の優先度と順番をまとめてありますので、そちらもどうぞ。
そして、効果を約束するものではありません。塩を盛ったから何かが起きる、という書き方はしません。長く受け継がれてきた作法として、意味と手順をお伝えします。
盛り塩は、どこから来た作法なのか
由来については、いくつかの説が並んで語られてきました。
ひとつは、中国の古い故事に由来するという説です。牛車で回ってくる主人を自分の家に立ち寄らせるため、門口に塩を置いて牛を止めた——そんな話が伝わっています。ここから、盛り塩は人を招き、縁を呼び込む作法として語られるようになったと言われます。料理屋や商店の入り口に置かれるのは、この流れですね。
もうひとつは、日本の清めの流れです。神事では古くから塩や砂が清めに使われてきました。土俵にまく塩、葬儀のあとの清め塩、神社で見かける盛り砂。どれも、区切りをつけて場を改めるという意味合いで受け継がれてきたものです。
そして風水や家相の系統でも、塩は場を整えるものとして紹介されてきました。ただし置く方位や皿の形について言うことは、系統によってかなり異なります。
つまり盛り塩には、招く作法と清める作法の両方の面が入っています。だから調べると答えが割れるのです。
何のための作法かを、決めてから始める
私が大切だと思っているのは、置く前に「何のために置くのか」を自分で決めておくことです。
盛り塩は、誰かに何かをするための道具ではありません。あの人が来ませんように、あの人が不幸になりますように——そういう気持ちを込めるための作法ではないのです。込めた念は、いちばん近くにいるあなた自身の心に残ります。恨みを毎日確認する装置になってしまっては、置かないほうがましだと私は思います。
盛り塩がしてくれるのは、もっと静かなことです。玄関に白い塩がひと山あるだけで、そこを通るたびに一度、意識が家の内と外を分ける。今日の外での出来事を、ここで置いていく。その区切りの目印になる。私は、盛り塩の値打ちはそこにあると考えています。
ただ、その玄関がものであふれていると、せっかくの目印は目に入りません。塩を置く前に整えておきたい点は玄関の風水でやってはいけないこと10にまとめましたので、器を買いに行く前に一度目を通してみてください。
なお、ここからお伝えするのは、広く共通している作法を中心にまとめたものです。宗派や地域によっては別の作法を伝えているところもあります。ご実家や地域に決まった伝え方があるなら、そちらを優先してくださいね。
用意するものは、塩と器だけ。ところが、この二つの選び方でつまずく方がいちばん多いのです。
まず塩の種類から。ここでいちばん多い誤解は、家にある食卓塩で構わない、という思い込みです。
塩の選び方
清めに使う塩は、精製されていない自然のままのものがよいとされてきました。海水から作られた粗塩、いわゆる天然塩ですね。実際上の理由もあります。食卓塩は固まりにくくする成分が加えられているものが多く、山の形に盛れないのです。
- 海水由来の粗塩、または天然塩と表示されているもの。数百円のもので十分です
- 焼き塩はより清めに向くとする説があります。あれば使ってもよいですが、必須ではありません
- 岩塩は粒が大きく山になりにくいので向きません。精製塩、味付き塩、ハーブ入りの塩も避けてください
- 料理に使ってしまわないよう、盛り塩用は別の容器に分けておくのがおすすめです
一か所に使う量は、小皿一枚に大さじ一から二、十グラムから三十グラムほどが目安です。多ければよいものではありません。
器の選び方
昔から使われてきたのは、白い小皿です。白は清浄の色とされ、素焼きや白磁のものがよく用いられてきました。
形は説が分かれます。円形がよいとする伝え方も、八方に通じる形として八角形を勧める伝え方もあり、どちらでも構いません。大きさは直径五センチから八センチほどが扱いやすいですね。
避けたほうがよいとされるのは次のようなものです。
- 欠けたもの、ひびの入ったもの。清めの器としては避けるとされ、手を切る危険もあります
- 柄の派手なもの、文字の入ったもの。目的が塩ではなく皿になってしまいます
- 普段の食事に使う皿。盛り塩用は専用に分けるのが基本とされます
- 金属製のもの。塩は金属を傷めます
盛り方の手順
きれいな形にするには型を使うのが確実です。盛り塩用の型は数百円で手に入りますし、なければ小さなおちょこで代用できます。
- 塩を器に取り、霧吹きでひと吹きするか、指先に少しだけ水をつけて全体に混ぜます。しっとりする程度で十分。濡らしすぎると形が崩れます
- 型に塩を詰め、上から押さえて締めます。詰めが甘いと抜いたときに崩れます
- 小皿を型の上にかぶせ、皿ごと上下をひっくり返します
- 型をまっすぐ上に引き抜きます。斜めに抜くと山が欠けます。崩れたら塩を戻して、何度でも作り直して構いません
型がない場合は、少し湿らせた塩を小皿の中央にこんもりと盛り、指の腹で側面を押さえながら円錐に整えます。完璧な形でなくて構いません。作るときは、無言でていねいに。「この家の空気が、静かでありますように」と心の中で置くくらいがちょうどよいですね。願いごとを詰め込む場所ではありません。
どこに置くか
玄関がいちばん基本とされます。家の内と外の境目だからですね。扉の外の左右に一対で置く形と、内側のたたきの隅に置く形があります。共用廊下に物を置くことは規約で禁じられている場合がありますので、集合住宅では内側にしてください。住まいの決まりのほうを優先に。
水回りも、古くから気の滞りやすい場所とされてきました。台所、洗面所、トイレに、一か所ずつ小さめに置きます。
なんとなく近寄りたくない一角に置く考え方もありますが、私は先に光と風を通すほうをお勧めしています。そういう場所は、たいてい物が積まれ、光が当たらず、風が通っていないものです。手当てできる原因の見つけ方は、家の気が悪いサイン10と、原因の見分け方にまとめてあります。
置かないほうがよい場所も挙げておきます。
- 人が通る動線の真ん中。蹴飛ばして崩れます。崩れた盛り塩は、気持ちのほうを乱します
- コンロの脇など火のすぐ近く、直射日光の当たる窓辺、エアコンの風が直接当たる場所
- 小さなお子さんやペットの手が届く場所。犬や猫にとって塩分は少量でも負担になります。ここはいちばん強くお伝えしたい注意点です
数は、一人暮らしなら一か所か二か所、家族で暮らす家でも三か所ほどまでが目安です。
取り替える頻度
ここも伝え方が分かれます。よく言われるのは次の三つです。
- 週に一度、曜日を決めて取り替える
- 毎月一日と十五日に取り替える。神棚のお供えを改める日と合わせる考え方です
- 汚れたり崩れたり、湿気を吸って変色したら、その都度取り替える
私がお勧めするのは、週に一度、曜日を決める形です。忘れないからです。夏場や水回りのものは傷みが早いので間隔を短く。表面が湿って灰色がかってきたら、日数にかかわらず替えどきです。
大切なのは、置きっぱなしにしないこと。取り替えるという行為そのものが、この作法のいちばんの中身だと私は思っています。
処分の仕方
土に返す、川や海に流すという作法を伝えている地域もありますが、現代の住まいで守るのは難しいことが多いですね。現実的な方法をお伝えします。
- 皿から塩を取り、白い紙に包みます。半紙でもコピー用紙でも構いません
- 心の中でひとこと、「ありがとうございました」と伝えます
- そのまま可燃ごみとして手放します
- 皿は水でよく洗い、乾かしてから次に使います
流しに捨てる方もいますが、大量に流すのは配管によくありません。手で包む動作が区切りとして働くので、私は紙に包む形をお勧めしています。なお、使い終えた塩を料理に使うことは避けてください。
やってはいけないと言われていること
- 恨みや呪いの気持ちを込めること。込めた気持ちを毎日確認するのは、あなた自身になります
- 置きっぱなしにすること。手入れをしない盛り塩は、作法として働きません
- 崩れたまま放っておくこと。気づいたら作り直すか、いったん下げてください
- 数を増やしすぎること。管理しきれずに、全部が放置になります
- 他人の家や敷地、共用部に置くこと
- 塩の作法だけで解決しようとすること。カビ、湿気、におい、騒音といった手当てのできる原因があるなら、そちらが先です
一人暮らしの場合、家族がいる場合
一人暮らしの方は、玄関の内側だけで十分だと思います。一か所を丁寧に続けるほうが、複数置いて放置するよりずっと意味があります。帰宅して靴を脱ぐとき、塩をちらりと見る。それだけで、外の一日をここで置いていく合図になります。ひとり暮らしは切り替えの合図が少なくなりがちなので、この目印は思うより効きますよ。
家族と暮らしている方は、少し気の配りどころがあります。説明せずに置くと、「何かあったのか」と不安にさせてしまうことがあるからです。何かから守るために置いていると受け取られると、かえって家の空気が張りつめます。玄関を整えるつもりで置いてみる、と軽く伝えておくのがおすすめです。
そして、家族の誰かを念頭に置いて盛り塩をしないこと。同じ家にいる人に向けて置いた塩は、置いた本人の心をいちばん硬くします。同居する相手に悩んでいるなら、塩より距離のとり方の工夫が先です。
小さなお子さんやペットのいるご家庭では、玄関の内側であっても手の届かない高さに置いてください。
出雲のワーク|取り替えの日の、十分間
取り替えの日に、これをやってみてください。
- 古い塩を下げ、皿を洗って乾かすあいだに、玄関の床を固く絞った雑巾で一度だけ拭きます
- 窓を二か所開けて、家の空気を五分間通します
- 新しい塩を盛りながら、この一週間で家の中がいちばん重く感じた瞬間を思い出します
- その重さの原因が、物なのか、空気なのか、人との関わりなのかを、ひとつだけ言葉にします
四番が中心です。続けていると、自分が何に消耗しているのかが月単位で見えてきます。塩は目印であって、見ているのはあなた自身の一週間なのですね。
寝る場所のほうが重いと分かってきた方は、寝室の運気とレイアウト|流派を超えた3原則を参考に配置を動かしてみてください。体にまとった重さを流したい日は、塩風呂のスピリチュアルな効果とは?正しいやり方と注意点の作法が合います。特定の相手との関わりを区切りたいのだと分かったなら、盛り塩ではなく縁切りに塩を使う方法|盛り塩・塩風呂・持ち塩の作法を解説のほうが向いています。
まとめ
- 盛り塩は場を整える作法です。誰かに何かをするための道具ではありません
- 塩は海水由来の粗塩、器は白い小皿。型を使えば形はきれいに作れます
- 置き場所は玄関と水回り。数は増やしすぎず、週に一度、曜日を決めて取り替えます
- 作法は宗派や地域で異なります。ご自身の地域や家に伝え方があるなら、そちらを優先してください
盛り塩を置きたくなるのは、たいてい家の空気が重いと感じているときです。その重さが場所から来ているのか、特定の関わりから来ているのか。先に確かめておくと、続け方が変わりますよ。
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