職場の頼まれ事が多すぎる|量を減らす手順
十七時。ようやく自分の仕事を開こうとして、今日も一日、人の依頼で終わったことに気づく。一件ずつは五分か十分の、断るほどでもない小さな用事。それが十件積み上がると、日中がまるごと消えている——。職場の頼まれ事が多すぎると感じているあなたは、この夕方を何度も見てきたのではないでしょうか。
こんにちは、縁の整え方の専門家・出雲です。この記事は、断り方のお話ではありません。頼まれた瞬間の返し方は頼まれると断れない時の対処|最初の10秒にまとめてあります。ここで扱うのは、一件ずつ正しく処理しても総量が減らない、という構造のほうです。
結論|断る技術ではなく、量を数字にして交渉します
- 一件ごとの判断が正しくても、依頼が入ってくる経路が変わらなければ総量は減りません
- 最初にやるのは記録です。二週間、頼まれ事だけを書き出します
- 記録を四つに仕分けると、移せるものと返せるものの合計時間が出ます
- その数字を持って上長に相談します。苦情の形ではなく、相談と提案の形で持っていきます
- 合意したことは、口約束にせず一行残します
なぜ、断る技術だけでは減らないのか
断り方を覚えると、たしかに何件かは減ります。けれど、しばらくすると元に戻る。この現象には理由があります。
一つは、断りにくい依頼だけが残るからです。上司からのもの、急ぎのもの、頼んできた人が困り顔のもの。断れる依頼から順に消えていくので、残った依頼の重さは前より増しています。
もう一つは、あなたのところに来る経路そのものが変わっていないからです。人は無意識に「頼めば通る場所」を覚えます。一度その地図ができると、あなたが何件断こうと、次の依頼はまたあなたのところに向かってきます。
つまり、変えるべきは返事ではなく、地図のほうなのですね。そして地図を書き換えられるのは、たいていあなた一人ではなく、上長を含めた話し合いです。そのために必要なのが、次の記録です。
手順1|二週間、頼まれ事だけを記録する
最初の一週間は、何も変えなくて構いません。ただ書くだけです。
記録するのは六項目。日付、頼んできた人、内容、かかった時間、本来その仕事は誰の担当か、断れそうだったか。スマホのメモアプリで十分です。所要時間は五分単位のざっくりで構いません。正確さより、抜けがないことのほうが大事です。
二週間にするのは、週によって波があるからです。一週間だと「たまたま忙しい週でした」と片づけられてしまいます。
この記録には、思わぬ効果もあります。書き出すこと自体が、あなたの中の罪悪感を薄くしてくれるのです。頭の中で「なんとなく多い」と感じている状態は、自分の感じ方の問題に見えます。紙の上に十四日分並ぶと、それは感じ方ではなく、量の問題になります。
手順2|記録を、四つに仕分ける
二週間分が溜まったら、一件ずつ次のどれかに印をつけます。
- もともとあなたの担当。これは頼まれ事ではなく、あなたの仕事です
- 誰がやってもいいが、あなたに来ているだけ。移せるものです
- あなたにしかできない。知識や権限がある。残すものです
- 頼んできた人自身の担当。返せるものです
仕分けが終わったら、2と4の時間を合計してください。この数字が、これから話し合いに持っていく材料です。
多くの方が、ここで一度驚きます。「週に六時間」「月にすると三日分」。感覚では小さな親切の積み重ねだったものが、まとまった時間として姿を現します。同時に、3に入る依頼が思ったより少ないことにも気づきます。あなたでなければ回らないと思っていた仕事の大半は、あなたが引き受けてきただけだった、ということが多いのですね。
手順3|上長に持っていくときの、三つの部品
ここが山場です。伝え方を間違えると、愚痴として処理されて終わります。相談として届けるために、三つの部品を用意します。
一つ目は数字。「月に三日ぶん、他部署からの依頼に使っています」
二つ目は影響。自分がつらいという話ではなく、業務に何が起きているかを言います。「そのぶん、担当している月次の分析が翌週に押しています」
三つ目は提案。相手に丸投げしないための部品です。「AとBは手順書を作って、依頼元で完結できるようにしたいのですが、いかがでしょうか」
そのまま使える形にすると、こうなります。
直属の上司に時間をもらうとき。「業務の配分について、十五分ほどご相談したいことがあります。記録を取ってみたので、それを見ながらお話しさせてください」
依頼者本人に返すとき。「これ、今月に入って三件目なんです。手順をまとめてお渡しするので、次からはそちらで進めていただけますか」
チームの場で言うとき。「窓口が私だけになっているようなので、当番制か、依頼フォームにするのはどうでしょう」
どれも、相手を責めない形になっているのがわかると思います。責める形にすると、話が人間関係の問題に移ってしまい、量の話が消えます。相談の切り出し方そのものに迷う方は、相談の切り出し方|例文と相手の選び方も参考にしてください。
手順4|合意したことを、一行残す
話し合いでうまくいっても、二か月もすると元に戻ることがあります。人は忘れますし、依頼する側にとっては小さな話だからです。
ですから、その場で決まったことを短くチャットに残してください。「本日ご相談した件、Aは手順書化、Bは山田さんに移管、で進めます」。この一行があると、戻りかけたときに責めずに戻せます。「前にこう決めましたよね」ではなく、記録を指すだけで済むのですね。
定例の場があるなら、月に一度、件数だけ報告するのも効きます。数字が並び続けている限り、話は消えません。
上長に相談しても変わらないときの、次の一手
相談しても配分が変わらない職場もあります。その場合、次の段は三つです。
一つ、評価面談のタイミングで、正式な議題として出す。日常の相談では流れても、評価の場では記録が残ります。
二つ、一段上の役職者や人事に相談する。飛び越えることに抵抗があるかもしれませんが、業務量の偏りは労務の話でもあります。
三つ、環境を変える。異動願いを出す、あるいは窓口の枠組みそのものを見直してもらう。人が変わらなくても、仕組みが変われば流れは変わります。
そして、休日も回復しない、朝に起きられない、食欲がないといった状態が続いているなら、量の調整より先に医療機関やカウンセリングへ相談してください。限界の見極めについては会社を辞めたい、人間関係が限界のときの判断軸にまとめています。
なお、断ってもしつこく押し戻してくる、こちらの都合を無視して依頼を重ねてくる特定の相手がいるなら、それは量の問題ではなく関係の問題です。エナジーバンパイアの撃退方法|守り方と距離のとり方で、消耗させてくる相手からの守り方を詳しくお話ししています。
縁を整える視点|通りやすい人は、いつのまにか通り道になる
昔から、水は低いところへ流れると言われます。仕事も同じで、通りやすいところへ集まっていきます。あなたが優しくて、仕事が速くて、嫌な顔をしない。それだけの理由で、流れの向きが決まってしまうのですね。
ここで大事なのは、流れを作った人を恨まなくていい、ということです。誰かが意地悪でそうしたわけではなく、地形がそうなっていただけです。地形なら、直せます。
そして、通り道になっている人は、自分の仕事の川底が浅くなっていることに気づきにくいものです。人の荷物を運ぶ時間が増えるほど、あなた自身が積み上げたかったものは後回しになります。あなたの時間は、あなたの流れのために使ってよいのですよ。
まとめ|感じ方の問題ではなく、量の問題として扱う
- 二週間の記録を取る。書き出した時点で、罪悪感が量の話に変わります
- 四つに仕分けて、移せるものと返せるものの時間を合計します
- 数字と影響と提案の三点で相談し、決まったことは一行残します
その量を、あなただけが引き受けている状態が続いていないか。今の職場との縁を、一度外から見てみませんか。
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