テレワークのチャットが疲れる|5つの原因別対処
送信ボタンを押す前に、文章を三回読み返す。語尾が硬すぎないか、絵文字はひとつ入れたほうがいいのか、この「了解です」は冷たく見えないか。そうしているあいだにも、別のチャンネルに通知が二つ増えている。仕事そのものは進んでいるはずなのに、夕方には言葉を扱う部分だけがすり減っていて、家族に話しかけられても声が出ない——。「テレワーク チャット 疲れる」と検索したあなたは、この疲れをうまく説明できないまま、何か月も続けてきた方なのではないでしょうか。
こんばんは、縁の整え方の専門家・出雲です。最初にお伝えしたいのは、この疲れは「慣れの問題」ではないということ。文字でやりとりする働き方は、対面の会話より確実に手間が多く、しかもその手間が数字にも成果にも残りません。だから、頑張ったのに何もしていない気がする。まずはそこを分けて考えていきましょうね。
結論|チャット疲れは一つではなく、五つに分かれています
先に要点をお伝えします。
- チャットの疲れは、実は性質の違う五つの疲れが同時に来ている状態です。どれが自分に効いているかで、手当ての場所が変わります
- 五つとは、割り込みの疲れ、見られている疲れ、言葉を整える疲れ、即レス前提の疲れ、そして読み違いを恐れる疲れです
- 全部を一度に減らそうとしなくて大丈夫。あなたにいちばん重くのしかかっている一つを見つけて、そこだけ手を打てば、体感はかなり変わります
- 業務時間外の連絡が当たり前になっている場合は、工夫の話ではなく仕組みの話です。相談先も後半でお伝えします
なお、文字のやりとりが多いこととは別に、人と会わないこと自体のつらさを抱えている方もいます。そちらは在宅勤務の孤独がつらいときの時間帯別の抜け方にまとめました。この記事は、その逆側——文字が多すぎることの疲れを扱います。
疲れ1|割り込みの疲れ
いちばん量の多い疲れが、これです。
通知が鳴るたびに、あなたの意識は今やっていた作業から一度離れます。内容が「ありがとうございます」の一言でも、離れることには変わりません。そして戻ってくるまでには、思っているよりずっと時間がかかります。一日に三十回それが起きれば、あなたは三十回、集中を作り直しているわけです。
疲れているのに何も終わっていない日は、たいていこれが原因です。あなたの処理能力が落ちたのではなく、途切れた回数が多すぎただけなのですね。
手当ては、確認する時刻を決めてしまうことです。
- 午前に二回、午後に二回など、チャットを開く時刻をあらかじめ決める
- 決めた時刻以外は、通知のバッジも音も切っておく
- 「今日はこの時間帯にまとめて返信します」とステータスや自己紹介欄に書いておく
三つ目まで揃えると、罪悪感がずいぶん軽くなります。黙って遅らせると気まずいのに、宣言してから遅らせると平気になる。人の心は、そういうふうにできているのですよ。
疲れ2|見られている疲れ
オンライン表示の緑の丸、既読の数字、最終更新の時刻。テレワークでは、あなたの居場所が常に画面上に表示されています。
出社していたころ、席を立ってお茶を淹れることを、誰も記録していませんでした。今は、五分席を外すとステータスの色が変わります。誰も見ていないかもしれないのに、見られているかもしれないという可能性だけで、人は気を張り続けてしまうのですね。ご相談を伺っていると、この疲れは真面目な方ほど重く出ます。
手当ては、見られている前提を逆手に取ることです。
- 離席の理由を書かない代わりに、戻ったときに一言だけ動きを置く。「戻りました」「午後は資料作成に入ります」
- 表示の色を気にするより、一日の終わりに一行だけ進捗を書く習慣を作る
- 相手のオンライン表示を、こちらも見に行かない。見に行くほど、見られる恐怖は強くなります
見られている疲れの正体は、監視ではなく、証明の圧です。存在をこまめに証明しなくてよくなると、緑の丸は気にならなくなっていきます。
疲れ3|言葉を整える疲れ
冒頭でお話しした、送信前に三回読み返すあれです。
対面なら、表情と声の高さが感情を運んでくれます。文字にはそれがないので、私たちは代わりに語尾と記号で温度を作っています。「わかりました」だけでは冷たいから「わかりました!」にする、それも軽いから「承知しました、ありがとうございます」にする。この調整を一日に何十回もしていれば、消耗しないほうが不思議です。
しかもこの手間は、誰の目にも見えません。気を使ったぶんだけ評価されるわけでもない。だから疲れだけが残るのですね。もともと人に気を使いすぎる傾向のある方は、気を使いすぎて疲れる人の消耗を減らす配分の技術もあわせて読んでみてください。
手当ては、自分の定型を先に決めておくことです。
- 受け取りの返事を三つに固定する(「承知しました」「ありがとうございます、確認します」「助かりました」)
- 絵文字は使う相手と使わない相手を、最初に一度だけ決めて固定する
- 依頼するときの型を一つ作る(用件→期限→理由の順で三行)
毎回ゼロから考えるのをやめる。それだけで、言葉を整える疲れは半分近くまで落ちます。冷たいと思われないかと心配になりますが、定型で返してくる人を冷たいと感じる人は、実際にはほとんどいません。
疲れ4|即レス前提の疲れ
チャットは本来、相手の都合のいいときに読んでもらえる道具です。ところが実際の現場では、いつのまにか「すぐ返すのが礼儀」という空気ができあがっていきます。
一人が三十秒で返し始めると、次の人も返さざるを得なくなる。誰も決めていないのに、非同期のはずの道具が同期の道具に変わってしまうのですね。そうなると、あなたは一日中、次の一手を待つ姿勢で座り続けることになります。休んでいるのに休めない感覚の正体は、たいていここにあります。
手当ては、速度を落とす場所を選ぶことです。
- 緊急の連絡手段を一つだけ別に決めておく。「急ぎのときは電話ください」と伝えておけば、残りの速度は落としていい
- 五往復を超えそうな話は、文字をやめて十分の通話に切り替える。文字で三十分かかる話が、声なら五分で終わることは珍しくありません
- 自分が先に速く返さない。速度の基準は、いちばん速い人が作ります
そして、あなた自身が誰かの割り込みを作らないことも、めぐりめぐって自分に返ってきます。夜に思いついた依頼を、翌朝に送る。それだけで、あなたのチームの速度は少し緩みます。
疲れ5|読み違いを恐れる疲れ
送ったメッセージに、しばらく反応がない。「怒らせたかな」「あの言い方が悪かったかな」と、履歴をさかのぼって読み返してしまう。文字は消えずに残るので、何度でも読み返せてしまうのが厄介なところです。
対面なら、その場の表情で終わっていた不安が、テレワークでは何時間も持ち越されます。しかも文字は、読む側の気分で意味が変わります。あなたが不安なときに読み返した文章は、たいてい実際より冷たく見えるものです。返信が来ないことを重く受け取ってしまう癖については、LINEの返信が遅い人の心理と待ち方の考え方が、そのまま仕事のチャットにも使えますよ。
手当ては、三つあります。
- 送ったメッセージを読み返す回数を、一回までと決める
- 反応がないときは、意味を推測せず事実だけ確認する。「先ほどの件、期限だけ教えていただけますか」
- どうしても気になる相手とは、週に一度だけ声で話す機会を作る。声を一度聞くと、その人の文字の温度が正しく読めるようになります
業務時間外まで通知が来るなら、それは工夫の話ではありません
ここまでは、あなたの側でできる調整の話でした。けれど、次のような状態が続いているなら、話の性質が変わります。
- 就業時間外や休日にも業務チャットが届き、返信しないと翌日に指摘される
- 深夜や早朝の連絡が常態化している
- 「見ていない」ことを責める発言が繰り返されている
こうした状態は、個人の受け流し方でどうにかする範囲を超えています。まずは社内の相談窓口や産業医、人事の担当部署に事実を伝えてください。社内に相談しづらい場合は、各都道府県労働局に置かれている「総合労働相談コーナー」で、無料で相談を受け付けています。判断は専門の窓口に委ねていただくとして、あなたに知っておいてほしいのは、我慢の量で解決する問題ではないということです。
また、眠れない、休日になっても気持ちが戻らない、通知音に体がびくりと反応する。そんな状態が二週間以上続いているなら、対処法より先に、心療内科や公認心理師によるカウンセリングなど、心身を診てもらえる場所を使ってくださいね。
縁を整える視点|文字の縁は、切れないから重くなる
昔から、縁は近づいたり離れたりを繰り返しながら、ちょうどいい太さに落ち着いていくものだと言われてきました。会えば濃くなり、会わなければ薄くなる。その自然な呼吸が、縁を軽く保っていたのですね。
ところがチャットの縁には、この呼吸がありません。会っていなくても、途切れることなく糸がつながったままになる。しかも履歴という形で、過去のやりとりが全部残ってしまいます。物理的には離れているのに、心理的にはいちばん近い。この矛盾が、テレワークの疲れをわかりにくくしているのだと私は思っています。
だからこそ、意識して切る時間を作ることが効きます。夜に一度アプリを閉じる、休日は端末を別の部屋に置く、寝室には持ち込まない。切るというのは冷たい行いではなく、縁を長持ちさせるための呼吸です。画面から距離を置く具体的な進め方は、デジタルデトックスのやり方にまとめました。
もうひとつ。文字のやりとりが多い環境では、相手の感情までこちらに流れ込んできやすくなります。人の気配を受け取りやすいご自覚のある方は、人のエネルギーを受けやすい人の対策で、受け取ったものを持ち越さないための整え方をお伝えしています。
まとめ|疲れの名前がわかれば、手当ての場所が決まります
- チャット疲れは五つに分かれます。いちばん重い一つを見つけて、そこだけ手を打ちましょう
- 確認時刻を決める、定型を持つ、速度の基準を自分で作らない。この三つが効きます
- 時間外の連絡が常態化しているなら、社内窓口や総合労働相談コーナーへ
画面の向こうの人たちに、あなたはどれくらい心を渡してしまっているでしょうか。まずは現在地を確かめてみませんか。
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