子育ての孤独が誰にも言えない|頼り先の地図
夜中の授乳のあいだ、窓の外は真っ暗で、街には自分だけが起きているような気がしています。夫が帰ってきて「今日どうだった」と聞かれ、「別に、いつも通り」と答えた。スマホのメモに書きかけた文章を、送る相手がいないまま消した——子育ての孤独は、こんなふうに、誰にも見つからない場所で積もっていきますね。
こんにちは、縁の整え方の専門家・出雲です。この検索をされる方の多くは、話し相手がいないのではありません。話せる相手はいるはずなのに、この話だけは出せない。そういう種類の孤独を抱えています。ですからこの記事は、友達を作りましょうという話にはしません。
- 「誰にも言えない」の中身は、四つの壁でできています。壁の種類によって、開けられる扉が違います
- 身近な人に言えないのは、あなたが人付き合いが下手だからではありません。近い相手ほど利害が絡んでいて、構造的に言いにくいのです
- ですからこの記事の中心は、頼り先の地図です。誰に何を言えるのかを、具体的な窓口の名前で並べていきます
まず、言えない自分を責めるのをやめるところから始めましょう。
「誰にも言えない」の中身を、四つに分ける
- 相手がいない壁。引っ越してきたばかり、実家が遠い、仕事を離れて人と会う機会が減った。物理的に、話す相手が生活の中にいない状態です
- 否定される怖さの壁。打ち明けて「みんなそうだよ」「今が一番かわいい時期なのに」と返された経験。話す前より孤独になった感じを覚えていると、二度目は出せません
- 言葉にならない壁。子どもはかわいい。夫は悪い人ではない。生活も困っていない。理由が説明できないから、口に出す資格がないように感じてしまう。この形がいちばん多いように思います
- 親失格になる怖さの壁。「かわいいと思えない日がある」「一人になりたい」。言った瞬間に自分がひどい親として確定してしまう気がして、飲み込まれます
四つめの言葉は、専門の窓口では日常的に扱われている、珍しくないものです。まずそこだけ、覚えておいてください。
身近な人に言えないのは、自然なことです
孤独を感じたとき、多くの方はまず身近な人を思い浮かべます。夫、実の母、友人、ママ友。そして、そのほとんどで話が止まります。理由ははっきりしていて、近い相手ほど、あなたの話に利害が絡むからです。
夫に言うと、家庭の運営についての交渉になります。感情を受け取ってほしいだけだったのに、解決策の話にすり替わる。実の母に言うと、心配されすぎるか、私のときはもっと大変だったと比べられるか。友人に言うと、子どものいる人には近すぎて話しづらく、いない人には遠すぎて伝わらない。ママ友に言うと、狭い世界で情報が回ります。園や学校の輪の中で本音を出しにくい事情はママ友トラブルに疲れたときの距離の取り方にまとめました。
つまり、誰にも言えないのは人選に失敗しているからではなく、身近な相手が構造的に言いにくいからです。孤独の出口は、利害のない相手を生活の中に一つ持つことにあります。
頼り先の地図|どこで、何が言えるか
子育て中の人が使える窓口は、思っているよりずっと多く用意されています。ただ、名前がわかりにくいので届いていないことが多いのですね。
地域子育て支援拠点(子育て支援センター、子育てひろば)
多くの市区町村に置かれている、未就園児と親のための場所です。予約なしで行けるところが多く、無料かごく少額で使えます。大事なのは、遊び場であると同時に相談の場でもあること。常駐しているスタッフは、子育ての相談を受けることを仕事にしています。「特に用事はないんですけど」で入って構いません。ここで解決しない話は、次の窓口につないでもらえます。
保健センターの保健師
保健センターには保健師がいて、乳幼児期の相談を受けています。健診の日以外でも、電話や来所で相談できます。強みは、家庭の状況を丸ごと見て、必要な支援に振り分けてくれること。眠れない、気持ちが晴れない、子どもをかわいいと思えない日がある、頼れる人がいない。どれを持ち込んでも構いませんし、訪問して話を聞いてくれる自治体もあります。
こども家庭センター(子育て世代包括支援センター)
妊娠期から子育て期までを通して相談を受ける窓口です。名称は自治体で違いますが、役所の子育て担当課で「相談の窓口はどこですか」と聞けばたどり着けます。使える支援を組み立ててもらう場所です。
ファミリー・サポート・センター、一時預かり、産後ケア事業
ファミリー・サポート・センターは、地域の中で子どもを預かってくれる人と預けたい人をつなぐ仕組みです。事前の登録が必要ですが、通院や用事のとき、少し休みたいときにも使えます。保育所などには、理由を問わず数時間預かってもらえる一時預かりの制度もあります。理由に「休みたいから」と書くのをためらう方が多いのですが、それは正当な理由です。
そして産後の時期には、宿泊や日帰りで助産師などのケアを受けられる産後ケア事業を設けている自治体が増えています。休むために使えるのが要点です。役所の子育て担当課か母子保健の窓口で「産後ケアは使えますか」と聞いてみてください。
電話やLINEで話せる窓口
児童相談所相談専用ダイヤル0120-189-783は、通報だけの番号だと思われがちですが、子育て全般の相談を受けています。しんどい、余裕がない、誰にも言えない。その段階で使って構いません。国が用意している親子のための相談LINEは、声を出さずに済むので、夜中や家族のいる場所からでも使えます。そのほか、多くの市区町村が独自の子育て相談ダイヤルを持っています。
これらは、あなたを評価するための窓口ではなく、困っている人に手が届くようにするために置かれています。使うことに資格は要りません。
「相談するほどではない」の壁を越える
窓口を並べても、多くの方はここで止まります。私なんて、相談するほどのことではない、と。けれど窓口の側から見ると、逆です。深刻になってから来る方より、なんとなくしんどい段階で来る方のほうが、ずっと手を貸しやすい。深刻な状態のときには、選べる手段が減っているからです。
切り出し方に迷うなら、次のどれかをそのまま使ってください。
「大したことではないかもしれないんですが、少し話を聞いてもらえますか」
「解決したいことがあるわけではなくて、話す相手がいなくて来ました」
「毎日しんどいのですが、理由がうまく説明できません」
三つめが言えれば十分です。理由を用意してから相談する必要はありません。理由がわからない状態を一緒に整理するのが、相談という場の役割です。誰にどう切り出すかで迷う方は相談の切り出し方と相手の選び方に、例文と相手選びの基準をまとめています。
心と体のサインが出ているときは、受診を
眠れない。食欲がない、または食べすぎてしまう。涙が突然出る。何をしても楽しいと感じない。子どもの泣き声に強い動悸がする。自分を責める考えが止まらない。消えてしまいたいという考えが浮かぶ。
こうした状態が二週間以上続いているなら、性格や気の持ちようの話ではありません。産後の時期であれば産婦人科や助産師、そうでなければ心療内科や精神科、あるいは保健センターに相談してください。産後うつは珍しいものではなく、誰にでも起こりうる、手当てのできる状態です。
そして、子どもに手が出そうになっている、実際に出てしまったという場合も、抱え込まないでください。児童相談所虐待対応ダイヤル189は二十四時間つながります。相談は罰ではなく、家が回るように手を貸すための仕組みです。感情の抑えがきかない場面が増えている方は子どもに怒りすぎてしまうときの手当ても読んでみてください。
今日できる、小さな接続を三つ
- 自治体名と「子育て支援センター」で調べて、いちばん近い場所を一つ確認します。行かなくていいので、場所だけ知っておきます
- 家の外の人と、ひとことだけ声を交わします。一日ゼロと一日一回では、体感がかなり違います
- 誰にも見せないメモに、今日感じたことを一行書きます
在宅で過ごす時間が長い方は、孤独が強く出る時間帯が決まっていることがあります。時間帯ごとの抜け方は在宅の孤独がつらいときの過ごし方に。仕事に戻る時期を控えている方は産休明けの職場復帰が気まずいときの考え方もどうぞ。
縁を整える視点|縁は、生活の形に合わせて組み替わります
昔から、暮らしの形が変わるとき、縁も一度ほどけて結び直される、と言われてきました。子どもが生まれてからの数年は、その組み替えがいちばん大きく起きる時期です。以前は毎週会っていた人と間が空き、そのかわりに、同じ時期を過ごしている人との縁が生まれていく。その途中に立っているから、足元が心もとなく感じるのですね。今の孤独は、あなたの人柄の結果ではなく、生活の形が変わったことによる途中経過です。
そしてもうひとつ。この時期は、一日の中に自分の名前で呼ばれる時間がほとんどありません。「◯◯ちゃんのお母さん」として過ごす時間が長くなると、自分の輪郭が薄くなっていく感じがします。孤独の正体の何割かは、それだと私は思っています。自分として過ごす三十分を持つ。それだけでも、内側は変わります。流れが止まっているように感じる時期が長引いているなら、運気の停滞から抜け出す方法に、生活の側から動かしていく手順をまとめました。
まとめ|言える相手は、身近な人でなくていいのです
- 「誰にも言えない」の壁は四つ。相手がいない、否定される怖さ、言葉にならない、親失格になる怖さ
- 身近な人に言いにくいのは構造の問題です。利害のない相手を、生活の中に一つ持ちましょう
- 子育て支援センター、保健センターの保健師、ファミリー・サポート・センター、産後ケア事業、児童相談所相談専用ダイヤル(0120-189-783)。心身のサインが二週間続くときは受診を
孤独が長引いているときは、人との関わり全体に疲れが出ていることもあります。今のあなたの状態を、いちど確かめてみませんか。
誰にも言えない気持ちは、LINEでそっと話してくださって構いません。