立春とは?暦の上の一年の変わり目の考え方
二月のはじめ、朝の情報番組で「今日は立春、暦の上では春です」と流れてきた。窓の外はまだ真っ暗で、玄関先の水たまりは凍っている。どこが春なのだろう、と思いながらコートを着る。それでも、その言葉がなぜか少し引っかかって、通勤の電車で調べてみた——そんな朝ではないでしょうか。
こんにちは、縁を整える仕事をしている出雲です。「暦の上では」という言い回しは、聞き流されがちですが、実はとてもよくできた考え方が入っています。この記事では、それがどういう区切りなのかをほどいてから、一年の変わり目という考え方をどう受け取ると暮らしが楽になるかまでお話しします。
先に結論をお伝えします。
- 「暦の上では」とは、太陽の位置で一年を区切る二十四節気のことを指しています
- 立春は「暖かくなった日」ではありません。寒さが底を打って、増えていく側に折り返した、という印です
- そして一年の始まりは、ひとつではありません。元日、旧正月、立春、年度、誕生日。どれを自分の変わり目にするかは、選んでいいのです
「暦の上では」とは、どの暦のことなのか
まず、言葉の中身から見ていきましょう。
ここで言う暦は、二十四節気のことです。太陽が一年かけてめぐる動きを二十四に分け、それぞれに名前をつけたものだと言われています。立春、雨水、啓蟄、春分、清明——聞き覚えのある言葉が並びますね。夏至や冬至も、この二十四のうちのひとつです。
大事なのは、これが気温ではなく、太陽の位置で決まっているという点です。ですから日付は毎年ほとんど動きません。立春はおおむね二月四日ごろで、年によって一日ずれる程度です。「今年は暖冬だから立春が早い」ということは起きません。天気ではなく、光の位置を数えているからですね。
なぜ立春が、一年の始まりとされてきたのか
二十四節気は、立春に始まって大寒に終わる並びになっています。つまり立春は、この暦の一番目にあたります。
農事の暦として使われていた時代を思うと、これはとても自然な置き方です。寒が明けてからの一年こそが、種をまき、育て、収める一巡だったからですね。冬のさなかで年を区切っても、暮らしの実感とは合わなかったのだと思います。
そして、その前日が節分です。節分とは季節を分ける日のことで、立春の前日は、この暦での大晦日にあたる日として受け取られてきました。豆をまいて古い年のものを落とし、翌日から新しい一年を迎える。節分と立春がひと続きなのは、こういう理由です。前日の作法をきちんと使ってみたい方は、節分の厄落としのやり方に当日の流れをまとめてあります。
一年の「始まり」は、ひとつではありません
ここが、私がいちばんお伝えしたいところです。
日本の暮らしには、一年の始まりとされる日がいくつも重なっています。
- 元日。いまのカレンダーの一月一日です
- 旧正月。月の満ち欠けをもとにした暦のお正月で、年によって一月下旬から二月中旬のあいだを動きます
- 立春。太陽の位置をもとにした暦の一番目です
- 年度。四月に始まる、仕事と学校の一年です
- 誕生日。あなただけの一年の区切りですね
なぜこんなに多いのかというと、日本が長いあいだ、性質の違う暦を重ねて使ってきたからだと言われています。月を見て日を数える暦と、太陽の位置で季節を測る暦。そして近代に入ってきた新しいカレンダーと、社会の都合で決まった年度。どれも捨てずに残ったので、始まりの日が並んでいるのですね。
これは、ややこしい話に見えて、実はとてもありがたい仕組みだと私は思っています。
元日に気持ちを切り替えそこねても、次の始まりが来るからです。年末年始が忙しすぎて何も決められなかった年、体調を崩して寝込んでいた年、家族のことでそれどころではなかった年。そういう年ほど、二月のはじめにもう一度、始まりの日が用意されている。年齢の区切りについても同じことが言えるという話は、節目の年に起きることでお話ししました。
やり直しの日が暦に何度も置いてある。これは、昔の人がくれた余白のようなものだと思っています。
「暦の上では春」と、実際の寒さがずれる理由
さて、いちばん納得しづらいのがここですよね。立春と言われても、二月上旬は一年で最も寒い時期です。
理由は、光と気温のあいだにずれがあるからだと言われています。
太陽がいちばん低くなるのは冬至、十二月下旬です。そこから日は少しずつ長くなっていきます。ところが、地面も海も冷え切っていますから、気温はすぐには上がりません。しばらく遅れて下がり続け、底を打つのが一月の下旬から二月の上旬あたりです。
つまり立春は、いちばん寒い頃にわざわざ置かれているのですね。
昔の人が季節を読み違えたわけではないと思います。基準にしたのが、暖かさではなく光の量のほうだったのでしょう。日の入りが少しずつ遅くなり、朝の暗さが薄まっていく。その変化は、寒さのただ中でも確かに起きています。
だから立春は、春が来たという宣言ではなく、増えていく側に折り返しました、という印なのだと私は受け取っています。そう考えると、あの言葉が急にやさしく感じられませんか。いちばん寒い日に「ここが底ですよ」と言ってくれる区切りなのですから。
変わり目は、点ではなく幅があります
もうひとつ、暦の受け取り方でお伝えしたいことがあります。
節気は「その日一日」を指すこともありますが、次の節気までの期間を指す言い方もあります。立春の場合、次は雨水で、二月十九日ごろ。つまり立春という区切りには、およそ十五日の幅があるわけです。
変わり目を一日の点だと思っていると、その日に何もできなかっただけで「今年も切り替えられなかった」と感じてしまいます。けれど、もともと幅のあるものなのですね。
十五日の幅を、こんなふうに使ってみてください。
- 立春の朝、カーテンを開けて空の明るさをひと呼吸だけ見ます。天気アプリで日の入り時刻を確かめてみるのもいいですよ。冬至の頃より、確実に遅くなっています
- その日か翌日に、この十五日で「増やしたい時間」をひとつだけ決めて書きます。目標ではなく、時間の使い方として書くのが要点です
- 雨水の頃、書いた一行を読み返します。できていなくても構いません。読み返す日を先に決めておくことのほうが大事なのです
決めることを一つに絞るのは、続けるためです。変わり目にたくさん決めた年ほど、二月の終わりには何も残っていない、ということが起きやすいのですよ。
季節の変わり目は、心と体が揺れやすい時期でもあります
暦の話をするときに、これだけは添えておきたいことがあります。
冬から春に移る時期は、気温の上下が大きく、日照も急に変わります。この時期に体調や気分が揺れる方は少なくありません。何かを始めるのに向く区切りであると同時に、無理をさせやすい区切りでもあるのですね。
ですから、立春に何も決められなくても構いません。休むことのほうが、その時期のいちばんよい過ごし方であることもあります。季節ごとの揺れへの手当ては季節の変わり目に気分が沈むときの整え方にまとめました。
なお、気分の落ち込みが二週間以上続く、眠れない日が重なる、食欲が戻らないといった状態が出ているときは、暦の話として片づけないでください。心療内科やカウンセリングなど、専門の窓口に相談することを先にしてくださいね。
縁切り・開運の視点——送ってから、迎えるという順番
縁を見つめてきた立場から、最後にひとつだけ。
私が二十四節気で好きなのは、立春の前に節分が置かれている、その順番です。
新しいものを迎える前に、まず古いものを送る。この順番は、人間関係でもそのまま当てはまります。新しい出会いがほしいと言いながら、消耗する付き合いをそのまま抱えている方は、とても多いのですね。器がいっぱいのままでは、次のものが入る場所がありません。
春に人の顔ぶれが動きやすいのも、この順番と関係していると思っています。年度の終わりに送り、始まりに迎える。春に人間関係が変わる意味でお話ししたとおり、別れが重なる季節は、入れ替わりの季節でもあります。
暦は毎年、この順番を私たちに見せてくれています。送ってから、迎える。焦って迎えにいかなくていいのですよ。
まとめ
- 「暦の上では」とは、太陽の位置で一年を区切る二十四節気のこと。立春はその一番目にあたります
- 立春はいちばん寒い頃に置かれた区切りで、暖かさの宣言ではなく、増えていく側に折り返した印です
- 一年の始まりは元日だけではありません。切り替えそこねても、次の始まりが暦に用意されています
年明けからどうも調子が出ない、という感覚があるなら、それが疲れなのか停滞なのかを分けておくと、この十五日の使い方が決まります。
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