悩み相談をうまく聞く|聞き方と線引き
長いメッセージが届いている。読み終えて、何か気の利いたことを返さなければと思うのに、打っては消してを繰り返して、結局「大変だったね」とだけ送る。送信したあとで、あれは冷たかっただろうかと考えはじめ、その夜はなかなか寝つけない——。悩み相談をうまく聞く方法を探してこられたあなたは、聞くのが下手なのではなく、たぶん引き受けすぎているのだと思います。
こんにちは、縁の整え方をお伝えしている出雲です。この記事は、聞く技術を足していく話ではありません。むしろ引き算です。聞く側の仕事は、思っているよりずっと少ない。そして、あなたが解決役になる必要はどこにもありません。
- 聞き上手になろうとするほど、相手は話せなくなります。まずその仕組みから
- 聞く側がやることは四つだけ。やらないほうがいいことは六つあります
- 抱え込まないための線引きを置きます。専門の窓口に渡すのは、見捨てることではありません
- なお、あなた自身が相談する側で困っている場合は、相談の切り出し方と例文が担当です。この記事は、聞く側に徹します
聞き上手になろうとするほど、相手は話せなくなります
相談を受けているとき、聞く側の頭の中では、たいてい別の作業が走っています。何と返そうか、どう慰めようか、この場合はどうするのが正しいのか。そちらに気を取られていると、目の前の人の言葉は半分しか入ってきません。
そして、この状態は相手に伝わります。話しているほうは、聞き手が返事を用意している顔をしていることに、驚くほど敏感です。用意されているとわかると、話す内容が変わります。相手が返しやすそうな話に寄せ、本当に困っていることを言わずに帰る。よくあることです。
ですから、まず降ろしてください。正しい返事を用意する役目は、あなたの仕事ではありません。降ろした分だけ、相手の言葉が入ってきます。
聞く側がやること、四つ
やることは、これで足ります。
- 最初に、何をしてほしいのかを確かめる。「聞くだけがいい? それとも一緒に考えたい?」。この一言を最初に置くと、そのあとの三十分がまるで違います。多くのすれ違いは、こちらが助言を始め、相手はただ聞いてほしかった、という食い違いから生まれます
- 相手の言葉を、そのまま置き直す。「上司に言われたことが、ずっと引っかかってるんだね」。要約も翻訳もしません。言い換えると、相手は「そうじゃなくて」と訂正する作業を増やされます。使うのは、相手が使った言葉です
- 沈黙を待つ。話が途切れたとき、そこはたいてい相手が言いにくいことに触れかけている場所です。埋めずに、二十秒ほど待ってみてください。相談の場で本当に大事な一言は、この沈黙のあとに出てくることが多いです
- 終わりの時間を、先に決めておく。「今日は一時間くらい大丈夫」。始まる前に言っておくと、相手も話す量を配分できますし、こちらも最後まで集中していられます
四つとも、うまく話す技術ではありませんね。聞く側は、しゃべらなくていいのです。
やらないほうがいいこと、六つ
こちらのほうが大事かもしれません。
一つ、自分の似た体験に置き換えない。「わかる、私も昔ね」。共感のつもりでも、その瞬間に話の主役が入れ替わります。出すなら、相手が話しきったあとに短く一つだけです。
二つ、評価しない。「それはひどいね」「あなたも悪いんじゃない」。どちらの方向でも、採点が始まると相手は事実を選んで話すようになります。良く見られたい気持ちは、相談の場でも働きます。
三つ、相手の相手を悪く言わない。夫のこと、上司のこと、親のこと。一緒になって責めると、その場は盛り上がります。ところが、相手が仲直りしたときに、悪く言った側だけが気まずくなるのですね。あなたが言った言葉を、相手はずっと覚えています。
四つ、解決策を並べない。三つも四つも案を出されると、相手は選べなかった自分を責めます。出すなら一つ、それも「こういうやり方もあるみたい」という置き方で十分です。
五つ、その場で決めさせない。「で、どうするの?」は、追い込む言葉です。相談の目的は、その日に決めることではありません。
六つ、他の人に話さない。共通の知人はもちろん、家族にも。心配だからという理由でも、伝わったときに壊れるのは信頼のほうです。ただし、命に関わる場合は例外で、これは後半でお伝えします。
聞いたあと、自分が重くなったとき
相談を聞いた夜、自分のほうが眠れなくなる。相手の話が頭から離れない。これは、あなたが冷たくないからこそ起きることです。対処を三つ置いておきます。
一つ、その日のうちに手放す動作を入れる。手を洗う、上着を脱ぐ、シャワーを浴びる。「ここまでが預かった分」と区切る動作を決めておくと、持ち帰る量が減ります。
二つ、自分が引き受けた分を書き出す。「私は、話を聞いた。私は、解決していない」。この二行だけで、役割の位置が戻ります。
三つ、相手の人生の責任を持たない。相手が選んだ道が良くない方向に見えても、それは相手の道です。心配は続けていいのですが、舵は持たないでください。
人の感情をそのまま受け取ってしまう気質の方は、この消耗が大きく出ます。仕組みと回復のしかたは共感疲労の対処法に、日々の守り方は人のエネルギーを受けやすい人の対策と3層の守り方にまとめました。
抱え込まないための線引き
聞く側にも、線が要ります。線を引くのは冷たさではなく、長く関わり続けるための条件です。
時間の上限を決める。一回一時間、深夜はやり取りしない。最初に決めておけば、途中で切るときに理由を探さずに済みます。「ごめん、今日はここまでにさせて」で十分です。
同じ話が三回目になったら、聞き方を変える。同じ内容が繰り返されるのは、相手がその場で解決を求めていない証拠でもあります。三度目からは「話すのはいつでも聞くけど、この件は私では力になれないかもしれない」と、正直に伝えていいのですよ。
自分が解決役に見えはじめたら、下りる。「あなたがいないと無理」と言われるのは、うれしくもあり、危うくもあります。関係が支え役と支えられ役で固定されると、どちらも身動きが取れなくなります。友人関係でこれが起きているときの整え方は友達の依存が重いときの向き合い方にまとめました。
そして、専門の窓口に渡す。これがいちばん大事です。ハラスメント、お金や契約のトラブル、離婚や相続、心身の不調。この四つは、親身な聞き手より、その分野の窓口のほうが早く力になります。渡すときの言い方も置いておきますね。
「話は変わらず聞くよ。ただ、この件は私が知らないことが多いから、詳しいところに一度聞いてみない?」
見捨てる言い方ではありません。むしろ、あなたが一人で背負って共倒れになるより、はるかに相手のためになります。窓口としては、職場のことなら社内の相談窓口や各都道府県労働局の総合労働相談コーナー、法律やお金なら法テラス、身の危険を感じることなら警察相談専用電話の#9110があります。
あなた自身が限界に近づいているときのサインは我慢しすぎる人の限界サインにまとめてありますので、時々ご自分のほうも確かめてみてください。
命に関わる話が出たときは、一人で受け止めない
ここは、はっきりお伝えします。
相手が、自分を傷つけたいという気持ちや、消えてしまいたいという気持ちをほのめかしたとき。そのときは、この記事に書いたどの技術も脇に置いてください。一人で受け止めようとしないことが、いちばん大切です。
やっていただきたいのは、専門の窓口や医療機関につなぐことです。よりそいホットライン、いのちの電話、こころの健康相談統一ダイヤル、自治体の精神保健福祉センター。眠れない、食べられない状態が続いているなら、心療内科や精神科の受診を一緒に調べるのも助けになります。命に危険が迫っていると感じる場面では、ためらわずに救急に連絡してください。
「誰にも言わないで」と言われることがあります。その場合も、命に関わることについては約束できないと、正直に伝えていいのですよ。「あなたのことは大事だから、これだけは一人で抱えられない」。そう言って、あなた自身も相談してください。守秘より、生きていることのほうが先です。
そして、こうした話を聞いたあとは、あなた自身も誰かに話してください。窓口には、支える側からの相談を受けているところもあります。聞いた人を支える仕組みは、ちゃんと用意されています。
縁を整える視点|聞くことは、預かることではありません
昔から、話すことは放つことだと言われてきました。胸のうちに抱えたものを、口から外へ出す。相談の効き目の大半は、聞き手の答えではなく、この放つ動作のほうにあるのだと私は思っています。
だとすれば、聞く側の役目は受け止めることではなく、その場にいることです。相手が放ったものを、あなたが持ち帰る必要はありません。放たれたものは、その場で散っていきます。
聞き上手だと言われる方ほど、全部を預かってしまいます。そして、預かった荷物は返せません。返せない荷物が積もると、いつしかその人からの連絡が重くなり、やがて距離を取ることになります。それは、優しさが足りなかったからではなく、預かりすぎたからなのですね。
そばにいて、頷いて、家に帰ったら手を洗う。これで十分です。そのくらいの距離のほうが、その人との縁は長く続きますよ。
まとめ|聞く側の仕事は、思っているより少ない
- やるのは四つ。何をしてほしいか確かめる、言葉をそのまま置き直す、沈黙を待つ、終わりの時間を先に決める
- やらないのは六つ。体験の置き換え、評価、相手の相手を悪く言う、解決策を並べる、その場で決めさせる、他言する
- あなたは解決役ではありません。専門の窓口に渡すのは見捨てることではなく、共倒れを防ぐ判断です
人の話を受け止め続けて消耗しているなら、その疲れがどこまで来ているのかを一度確かめてみませんか。
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