彼の家族と合わない不安|結婚前に見るのは彼
帰りの車の中、彼が「どうだった?」と聞いてくる。悪いことは何も起きなかった。お茶を出してもらって、仕事の話をして、写真を見せてもらって、笑って帰ってきた。それなのに、シートベルトを外した瞬間に体からどっと力が抜けて、「うん、よかったよ」と答える自分の声が、少しだけ嘘っぽく聞こえる——。彼の家族と合わないかもしれない、この人と結婚したらこの家に入るのか、と考えはじめたあなたは今、誰にも相談しにくい種類の不安を抱えているのだと思います。
先にお伝えしておきたいことがあります。この記事は、彼のご家族を評価するための記事ではありません。
- 会った回数がまだ少ないうちは、「合う・合わない」の判断材料そのものが足りていません
- 不安の中身は、見た事実・想像・彼の態度の3つに分けると、扱えるものだけが残ります
- 結婚前に本当に見ておくとよいのは、ご家族の性格ではなく、彼が二つの家の間にどう立つかです
「合うかどうか」は、いまの情報量では決められません
婚前にご家族と会う場面は、たいてい特別な設定になっています。玄関で靴をそろえ、手土産を渡し、みんながよそ行きの顔をしている。あなたが緊張しているのと同じくらい、あちらも緊張しています。息子さんの大事な人を迎える日に、普段どおりでいられる人はそう多くありません。
つまりあの場で見えたものは、その家の日常ではなく、初対面の空気にすぎないのですね。話題が合わなかった、間が持たなかった、価値観が違う気がした——どれも本当の感覚ですが、それが十年後の関係を言い当てているとは限りません。
ここを取り違えると、判断できないことを判断しようとして、夜ごと同じ場面を再生することになります。数回会っただけで「合わない」と結論を出すのは、実は早すぎるのです。逆に「きっと大丈夫」と言い聞かせて全部を飲み込むのも、同じくらい早すぎます。今のあなたに必要なのは結論ではなく、不安をいったん分解することです。
不安を、3つに分けてみてください
紙とペンを用意して、今の不安を思いつくまま書き出してみましょう。書き終えたら、一つひとつに1・2・3の番号を振ります。
- 自分の目で見た事実(言われた言葉、実際に起きたこと)
- 想像と伝聞(彼から聞いた話、こうなりそうだと感じたこと)
- 彼の態度(その場で彼がどうしていたか、あとでどう話したか)
分けてみると、多くの方が驚かれます。1に入るものが思っていたよりずっと少なく、2が大半を占めているのです。「たぶんこの先こうなる」「こういう家は大変らしい」という想像は、不安をふくらませる力は強いのに、対処のしようがありません。
そして注目してほしいのは3です。彼が何も言わずに黙っていた、話をそらした、あとで「気にしすぎだよ」と流した。ここに書き込みが多いなら、あなたの不安の中心はご家族ではなく、彼との間にあります。これは扱えます。相手が変わるのを待つ必要がなく、二人で話し合える範囲の問題だからです。
書き出したものは、消さずに残しておいてください。会う回数が増えるにつれて、2に入っていたものが1に移ったり、消えたりします。それが情報が増えるということです。
結婚前に見ておきたいのは、彼がどこに立つか
長く相談を受けてきて思うのは、婚後に苦しくなるかどうかを分けるのは、ご家族の性格よりも、彼の立ち位置だということです。優しいご両親でも、間に立つ人がいなければ距離はうまく取れません。逆に少し賑やかで踏み込みがちなご家族でも、彼が間にいれば穏やかに収まります。
次の5つを、これからの数回で観察してみてください。責めるためではなく、知るために見ます。
- あなたが困った顔をしたとき、彼が気づくかどうか。気づいた素振りだけでも十分です
- 話題が重くなったときに、彼が場を切り替えられるかどうか
- 帰ったあとに、彼のほうから「今日どうだった」と聞いてくれるかどうか
- あなたが感じたことを話したとき、否定せずに最後まで聞けるかどうか
- ご家族から出た提案に対して、彼が「二人で決めます」と言えるかどうか
5番目がいちばん大事です。ここが言える人なら、この先の行事も住まいも、二人の側から決めていけます。今すぐできなくてもかまいません。できるようになってほしい、と伝える相手がいるということですから。
なお、合わないと感じているのが彼のご家族ではなく、あなたのご両親のほうが結婚に難色を示しているという場合は、対応の順番が変わります。そちらは結婚を親に反対されたときの4タイプ別の対応にまとめてありますので、立場が逆のときはそちらを読んでみてください。
伝えるときは、ご家族を評価する言い方を避けると通りやすくなります。「お母さんが苦手」ではなく「私はあの場面で言葉に詰まったから、次はあなたに話を引き取ってほしい」。人ではなく場面を主語にすると、彼も守りに入らずに聞けます。
会う前と会ったあとに、負担を減らす工夫
不安は気持ちの問題に見えて、実は段取りでかなり軽くなります。
- 訪問の時間を、はじめから短く決めておく。二時間で切り上げる予定を、行く前に彼と共有します
- 帰る口実を先に置く。夕方に用がある、と到着時に言っておくだけで、終わり方が楽になります
- 手を動かす役目をひとつ持つ。配膳でも写真を見る係でもかまいません。役目があると質問が集まりにくくなります
- 帰り道に、二人だけの時間を三十分つくる。家に直行せず、どこかで座る時間を挟みます
- その日感じたことは、その日のうちに一行だけメモしておく。あとで読み返すと、印象と事実の差がわかります
人の多い場やよその家に長くいると、それだけで消耗してしまう方もいます。もともと場の空気を受けやすい気質のある方は、人のエネルギーを受けやすい人の3層の守り方に、行く前と帰ったあとの整え方をまとめてあります。
「結婚後」の心配は、いま全部背負わなくて大丈夫です
同居はどうなるのか、行事のたびに呼ばれるのか、介護はどうなるのか。婚前の段階で、この先何十年ぶんの心配を一晩で背負おうとしてしまう方が本当に多いのですね。
けれど、結婚後の関係は結婚前の想像とかなり違う形で始まります。住む場所、働き方、子どもの有無、双方の親の状況。決まっていない変数が多すぎる段階で答えを出そうとすると、不安だけが大きくなります。
いま決めておくとよいのは、細部ではなく方針です。会う頻度の目安、盆や正月の過ごし方、お金の線引き、緊急時の連絡の道筋。この4つについて、二人がだいたい同じ絵を描けているなら、細かい調整は後からできます。
そして、結婚したあとに義理のご家族との距離で実際に苦しくなったときには、そのときの対処があります。先回りして怖がる必要はありませんが、いざというときの引き出しとして義母ストレスが限界に達しているときの距離の取り方を知っておくと、少し安心できるかもしれません。今の段階のあなたは、まだそこにいません。
不安の下に、結婚そのものへの迷いが隠れていることも
もうひとつだけ、確かめておいてほしいことがあります。ご家族への不安が強いとき、その下に、結婚そのものへの迷いが混ざっていることがあります。
見分け方は簡単です。「もし彼にご家族がいなかったとしたら、この人と結婚したいですか」。この問いに迷いなく「したい」と答えられるなら、扱うべきは家族との距離の設計です。答えに詰まるなら、家族の話とは別に、結婚そのものへの迷いを整理したほうが楽になります。その整理の道具は結婚に迷う・決め手がないときの12の問いにまとめました。
なお、この不安が続いて眠れない日が重なっている、食欲が戻らないという状態が二週間以上続いているなら、心療内科やカウンセリングなど専門の窓口も選択肢に入れてくださいね。判断は、体が回復してからで間に合います。
縁を整える視点から
昔から、婚礼は二人だけのものではなく、二つの家の縁がゆるやかに結び直される節目だと言われてきました。結び直しの時期には、どちらの側にも揺れが出ます。あちらの家にも、迎える緊張と戸惑いがあるのですね。
私は、この時期の不安を悪い前触れだとは考えていません。むしろ、あなたが真面目にこの縁を見ようとしている証だと受け取ります。何も感じずに入っていく人より、立ち止まって考える人のほうが、結果として長く穏やかな関係を作られることが多いのです。
縁を整えるとは、合う人だけを選ぶことではなく、間合いを自分たちで決められるようにしておくことです。年に何回、何時間、誰と会うのか。それを二人で決められる関係になっているなら、多少の違いは時間が埋めてくれますよ。
まとめ
- 数回会っただけの印象では、合う合わないの判断材料はまだ足りていません
- 不安は、見た事実・想像・彼の態度の3つに分けると、扱えるものが見えてきます
- 結婚前に見ておくのは、ご家族の性格より、彼が二つの家の間に立てるかどうかです
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